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地域医療勉強会前半、精神科医芳賀のリアルな勉強会を共有します。

Автор: 精神科医 芳賀高浩

Загружено: 2026-03-18

Просмотров: 2043

Описание: 本日はこのような機会をいただき、ありがとうございます。クリニック中野で訪問診療を行っております、精神科医の芳賀高浩です。どうぞよろしくお願いいたします。

今日は「訪問診療でできること」というテーマで、皆さんと一緒に考えていきたいと思っています。本当は、私自身、こういう場では参加型のワークのような形がとても好きなんです。皆さんに考えていただいて、それを発表し合って、そこからまた広げていく、そういうやり方が好きなのですが、今日は主催者の方とも相談して、前半は私のほうからまとまった形でお話をさせていただくことになりました。

まず最初に、訪問診療という言葉そのものが、まだあまり身近ではない方も多いのではないかと思います。実際にご自身やご家族が訪問診療を受けたことがあるという方は、それほど多くありませんでした。ですから今日は、訪問診療をまったく知らない方にもわかるように、できるだけ具体的にお話ししていこうと思います。

実は「訪問診療」とよく似た言葉に「往診」があります。この二つは似ているようで、実はまったく違うものです。ところが、医療者の中でも区別して使っている人もいれば、あまり区別せずに使っている人もいて、意外と曖昧になっていることがあります。

往診というのは、急に具合が悪くなったときに、医師が呼ばれて行くことです。たとえば、急に熱が出た、急に呼吸が苦しくなった、急にお腹が痛くなった、あるいは認知症の方が急に家を出て行ってしまって大変なことになった、そういう「急な困りごと」に対して駆けつけるのが往診です。

一方、訪問診療は最初から予定して行くものです。あらかじめ定期的に伺い、体調や生活の様子を見ながら、薬を調整したり、生活環境を整えたりしていく。そうやって「急に困ることが起きにくいようにする」のが訪問診療です。言ってしまえば、普段のお薬を出しに行くことも訪問診療の大事な役割の一つですし、それだけではなく、状態が悪くならないように微調整を重ねていくことが訪問診療の本質でもあります。

面白いことに、仕事としては急に呼ばれていく往診のほうが大変そうに思えるのですが、診療報酬の仕組みとしては、予定して定期的に行く訪問診療のほうが高く評価されています。これは、急に困ったところへ行くことよりも、そもそも急に困ることが起きないように管理することに価値がある、という考え方でもあるのだと思います。

私はもともと、開業医の先生方に対して、かなり偏見を持っていた時期がありました。看板だけ見ていると、夕方には診療が終わるように見えるし、昼休みも長い。正直、ずいぶん楽な仕事をしているのではないかと思っていたんです。けれど実際には違いました。昼の長い休み時間には往診に出ていて、夜まで診療や事務仕事をしている。開業医の先生方が地域の中でどれだけ多くのことを担っているかを知って、私の見方は大きく変わりました。

さて、訪問診療にはいろいろな分野がありますが、私は内科医でもあり、精神科医でもあります。最初の10年間は内科をやり、その後あらためて精神科の研修を受け、精神科医としても長く仕事をしてきました。内科と精神科の両方を見てきた立場から言うと、高齢の方の訪問診療では、身体の病気だけでなく、精神症状や認知症への対応がとても重要になります。

認知症というと、一般には「物忘れ」の病気だと思われがちです。もちろん物忘れは大きな症状の一つですが、それだけではありません。介護の現場で本当に困るのは、物忘れ以外の症状であることも多いのです。

たとえば「物盗られ妄想」があります。自分の洋服やお金や大切な物を、誰かが盗んでいくと思い込んでしまう。隣の人が持っていった、上の階の人が持っていった、と毎日のように訴える方もいます。でも実際にはなくなっていない。にもかかわらず、ご本人は強く確信しているのです。

あるいは、配偶者が浮気していると確信する妄想もあります。毎晩女の人を連れ込んでいる、物音がする、絶対にそうだ、と訴える。実際に相手を見たわけではないのに、確信だけは非常に強い。

ここで大事なのは、妄想は単なる勘違いとは違う、ということです。勘違いなら説明すれば訂正されることがありますが、妄想は説明しても揺らぎません。「そんなことないよ」と言って納得してくれるなら、それは妄想ではないんです。ですから、物盗られ妄想のある方に「盗られていませんよ」と正面から言っても、あまり意味がありません。不倫妄想のある方に「ご主人は浮気していませんよ」と説得しても、事態はあまりよくならない。そういう病的な確信が認知症の中で起こることがあります。

また、家の中に子どもたちがたくさん来て遊んでいる、と訴える方もいます。これは幻覚です。実際には誰もいないのに、見えてしまう。あるいは、もともとは穏やかだった方が怒りっぽくなり、暴言や暴力が目立つようになることもあります。認知症では、前頭葉の働きが落ちることで、感情のコントロールや我慢が難しくなるのです。

さらに大きな問題になるのが徘徊です。家から出て行ってしまい、何度も警察に保護される。ご家族にとっては非常に大きな負担ですし、ご本人にとっても危険です。

精神科の訪問診療は、こうした認知症に伴う妄想、幻覚、怒りっぽさ、徘徊といった問題に対して、生活の場で関わっていく医療です。診察室の中だけではなく、その人が実際に暮らしている場で、何が起きているのかを見ることができます。外来だと、どうしても患者さんは少しよそ行きの顔をされますし、ご家族も家の中の様子をうまく伝えきれないことがあります。でも訪問すると、何回か伺ううちにだんだん普段の姿が見えてくる。そこがとても大きいのです。

訪問診療で何をしてくれるのか、と聞かれたら、私は「往診が必要にならないようにしてくれること」と答えます。急な発熱、急な呼吸苦、急な生活上のトラブル、認知症の方の徘徊や混乱、そういったことが少しでも減るように、毎週あるいは2週間に1回といった頻度で状態を見て、条件を整えていく。それが訪問診療です。

だから、ある意味では、腕のいい訪問診療というのは往診の回数が減っていく診療とも言えます。もちろん、病気そのものの重さのためにどうしても急変が多い方はいます。熱を出しやすい方もいるし、呼吸苦を繰り返す方もいる。けれど、それでも「できるだけ急な困りごとを減らす」努力をしていくことが大切です。

そしてその「腕」というのは、単に薬の調整が上手かどうかだけではありません。たとえば、不安が強くて一人暮らしが成り立ちにくい高齢者の方がいるとします。その方が不安で何度も電話をかける前に、誰かが毎日顔を見に行ける体制を作れないか。ヘルパーや訪問看護、デイサービス、ケアマネジャーと連携して、一週間の生活をどう埋めるかを考える。そういう「体制を整える力」もまた、訪問診療の重要な腕の一つです。

医師は医療保険の中でできることを考えますし、ケアマネジャーさんは介護保険の中でできることを考えます。どちらが上とか下ではなく、使える制度が違うだけで、生活を支えるという意味では同じ方向を向いています。医療保険でできることもあれば、介護保険だからこそできることもある。そこを組み合わせて、その方の生活を支えていくのです。

実際、訪問診療が導入されるきっかけは、必ずしも計画的とは限りません。認知症の方であれば、警察に保護された、家族とのトラブルが大きくなった、叩かれた、もう限界だ、そういう「何かが起こった」時に初めて導入されることが多い。ご家族にとっても、新しく人が入ってくるというのはエネルギーが要ることです。だからこそ、何かきっかけがあった時に、「もう誰か来てほしい」と思える、そのタイミングで導入されることが少なくありません。

本当は、何も起きていないうちに、計画的に入れたほうがいいのかもしれません。でも現実には、「もう無理だ」と思う場面があって、そこで初めて訪問診療という選択肢が現実味を帯びてくるのです。

また、外来に通えている方と訪問診療の違いとして、頻度の問題もあります。訪問診療は、最低でも2週間に1回は伺うことが多い。そうすると、単に病気を見るだけではなく、生活の変化を継続的に見ていくことができます。デイサービスに行けた、外に少し出られた、寝ている時間が増えた、食欲が落ちてきた、そうした変化を細かく捉えられるのです。そして、「できたこと」を一緒に喜びながら、その人の生活が少しでも前向きになるように支える。そういう意味での生活指導や動機づけも、訪問診療の大事な役割です。

今日はここまでを前半として、訪問診療とは何か、往診とどう違うのか、そして訪問診療が実際にはどんな役割を果たしているのかについてお話ししました。後半では、では実際に急に具合が悪くなった時に、医師は何をしてくれるのか、どういう時に呼ぶべきなのか、そういった具体的な場面について、皆さんと一緒に考えていきたいと思います。

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